事例
身寄りのない高齢者について。本人は軽度の認知症で一人暮らしをしています。これまで自身で金銭管理をしてきましたが、最近、通帳や印鑑の紛失が続いています。本人はできなくなってきていることを自覚しており、不安を感じているようです。日常生活においては、介護保険サービスを利用しながら生活できており、今のところ大きな問題はありません。
本人に「成年後見制度」と「日常生活自立支援事業」のどちらの利用を勧めればよいでしょうか。
回答
日常生活自立支援事業とは、名古屋市障害者・高齢者権利擁護センターが行っている事業です。本人との契約に基づき、通帳や印鑑等をお預かりして、生活費を出金してお届けしたり、福祉サービスの利用料や公共料金の支払い等を支援したりするサービスです。契約に基づいたサービスですので、契約能力があること、利用意向の確認ができることが必要です。
本件の場合は、本人の意向に基づいた契約が可能だと思われます。金銭管理の課題に着目した場合、本人の現有能力を活用するためにも、日常生活自立支援事業の利用が望ましいと思われます。
一方で、日常生活自立支援事業における財産管理は、日常生活の範囲内に限られています。例えば、不動産の売却、遺産相続の手続き、訴訟等は対応できません。また、不要な契約や悪徳商法の被害等による対応については限界があります。このような法的な課題がある場合は、日常生活自立支援事業の利用と併行して相談窓口(消費生活センターや弁護士会等)も検討し、それらでは解決がはかれない場合は、成年後見制度の利用の検討が必要です。
身寄りがないことに伴う本人の課題と本人の意向を踏まえて、支援者のチームでどの制度を利用することが適切かを検討することが大切です。